『死の舞踏』03/30
千穐楽、無事に終えられましてお疲れさまでございました。
ネタバレ解禁していきますよー。
『死の舞踏』、観てきまして。
Bunkamuraシアターコクーンを『令嬢ジュリー』とで二分割するという荒業(笑)
令嬢ジュリーが客席スペース、死の舞踏が舞台スペースを利用して建て込まれてるんですけど、そうなると客席に座るまでに袖の中を通っていくことになるんですよね。
私は右ブロックの座席だったので上袖を通過したんですが、普通なら滅多にお目にかかれない綱元や操作盤なんかも見られて、観劇ファンにはちょっと嬉しい配置だったのではと思ったりしました。
あと、袖に向かって台詞を言う芝居って他の舞台でも結構ありますけど、空間に限りがあるので、エフェクトかけない限りは声が多少こもっちゃうじゃないですか。しかし今回は、令嬢ジュリーぶんのスペースが袖の向こうにちゃんとある訳で。
そのおかげで声がこもらずに抜けてく感じが好きでした。ちゃんと窓の外に向かって喋ってる感といいますか。
そして死の舞踏の客席、あれキャパ250くらいですか?
その人数でこの舞台を独占していいんだろうかと、不安を覚えるほどの贅沢感のあるお芝居でございました。
そのぶんかどうか解りませんがチケットは少しお高めとなりますけど、パンフはお安くてね。
「さすが日活ロマンポルノ俳優……!!」となったあれらのシーン、凄かったのは実は成志さんだったというwww
そういえば!
クルトがアリスをピアノの上に押し倒すとこ!
右の客席からは、音尾さん演じるクルトの左手の挙動がばっちりだった訳ですが、右手では乱暴にアリスを鍵盤に押さえつけてるんだけど、左手ではちゃんと腰から腿のあたりをフォローしてたのがグッときました。
そのシーン、こちらからはクルトの唇からしたたる血液が見えてたんですけど、左の客席からはアリスの首筋からしたたる血液が見えてたのかなあ。
演出だと気付くまでは、本当に音尾さんが怪我したように見えてしまったくらいに段取りが自然だったので、血糊の袋がどこに仕込まれてたのか気になるなあ……
アリスの下着の肩紐あたりかしら。
観客からの死角がないような舞台でああいう仕掛けがあると、驚きが大きくていいですよね~。
あとグッときたといえば、エドガーの目の前でアリスがクルトの唇にむしゃぶりついたとこ。
あそこでエドガーが二人から目を逸らすんですけど、少なくとも「見たくないものを見ないようにする」という表情ではないんですよね。
浮気への怒りというよりは、気まずさが勝っているような。「見るのも悪いし見ないであげよう」みたいな。
そんな風に私には見えてたんですが、その目線の外すタイミングとか外し方とかその長さとか。
好きだったんですよね。ものすごい細かい話になりましたけど。
あと、客席が向かい合わせなので、あんまりジロジロ見るもんじゃないって解っていても、開演前は何となく向かいの客席を眺めてしまいまして。
その中に八十田さんらしき人をお見かけしまして、少し浮かれてしまいました。
後日Twitter等で検索してみたらご本人だったらしく、更に浮かれてしまいました。
眼鏡もマスクもなんにもしてなかったな……いやもしかしたら眼鏡はしてたのかな?
客電っていうか普通にバトンに吊られた灯体で真上から客席も照らされてたんで、お互いの顔は基本的にはよく見えないんですよね。影になっちゃうから。
それでも滲み出る八十田さんのオーラ。
さて中身の話。
序盤~中盤、というかほぼ全編通してとてもサスペンス翻訳劇らしいといいますか、登場人物ひとりひとりの言葉の真意をはかりつつ慎重に台詞を聞き取る作業が続いたんですけれど。
最後の最後で……あれこれ喜劇?喜劇かな?
なんかね、見終わったあとの気持ちをしいて一言であらわすとしたら
「勝手にしてくれ!!」
だったんですよね。
誰目線かは判りませんけど……島の他の住人目線かなあ。
頼むからこっちに迷惑のかけない範囲で、あんたら夫婦で一生勝手にやっててくれよ!! みたいな。
音尾さん演じるクルトも……あれクルト可哀想すぎやしませんか。
いやまあ自業自得感は否めませんが。アリスがどんな“女”であるかを、若い頃から知っていたはずなのでね。
判ってて、自分から蜘蛛の巣に引っ掛かりに行った感はね。ありましたものね。
実は本来、この演目は二部構成らしく。
一部のみの上演なんですね今回。
道理でなんか、なんとなく不完全燃焼感。
ちなみに、二部のサブタイトルが「吸血鬼」だと聞いて、口許をアリスの血液で濡らしたクルトの映像が、フラッシュバックしたりしなかったり。
いやしかし……音尾さんはやっぱり毎度のことながら巻き込まれっぷりが素晴らしいですし
(メルシーといいノケモノといい)
神野さんは「もし実在したら絶対にお近づきにはなりたくない」感じの女を演じられたらピカイチだよなあと思ったりしたんですが、
でもやっぱり成志さん……好いなあ……やっぱり好きだな成志さん……
滑稽と狂気のはざまが……好きだな……
『ダブリンの鐘つきカビ人間』とかさ。
『鈍獣』とかさ。
あの塩梅が堪らんのですよ。また、面白いシーンだったとしても何でかセクシー、っていうかエロイんだよなあ……いや~至福。
昨年亡くなられた平幹二朗さんの代役ということでしたが、実年齢が役より10歳ほど若いぶん、得体の知れない感は強まってそうなエドガーが好きでした。
特にやっぱり、アリスのピアノに合わせて誰にも見られずひとりで踊るところが好き。
あと地味に、クルトの言葉を反復するとこで、判るか判らないかの微妙なラインのモノマネで言ってたのも好き。